2月最初の投稿となりますが、今月の半ばを過ぎると確定申告が待っています。
ペーパーレス化すなわち人件費削減をスローガンに、確定申告にもその波が押し寄せていて、マスコミでも盛んにスマホ申告などの簡単さをアピールするイベントが報道されています。
小さい文字が既に相当困難でストレスとなっている私には、スマホで申告するという選択肢は頭からありませんが、
※画像出処:bizoceanジャーナル社WEBサイト(https://journal.bizocean.jp/)より
個人的にはこれまでPCを使って、国税庁のWEBサイトにある申告書の「自動作成コーナー」を利用して仕上げたあと、印刷した書類を郵送して提出し、「控え」に受領印をついて返送してもらっていました。
しかし今年から受領印が廃止されたことで郵送する意味もなくなったので、控除証明の添付が不要かつ、カードリーダーとマイナンバーカードさえあれば以前よりぐっと手軽になったe-Taxを利用しようと、練習を兼ねて試作に取り組み始めました。
これまで通り、途中までは例の「自動作成ツール」を使うのですが、作成の途中途中でそこまでのデータを保存する機能があり、隙間時間で練習できる点は継承されていた一方で、スマホ申請に合わせて簡素化したためか、手順の構成が多少変更されているように感じています。
確かに、比較的単純な収支であれば変更した分だけ簡単に申告できそうな一方で、私たち投資家や収入先が多岐にわたる収支を抱えている方々にとって、正しい申告項目を探し出すのには逆に手間が増えた印象です。
収支報告書等の試作はまだこれからで、使いやすさなどは未知数ですが、何れにしても提出期限ギリギリになって慌ててしまう前に予め準備をすることで、手順に慣れたり必要データの有無なども確認できたりしますから、早めのご対応をおススメします。
さて本題ですが、2月に入ったと言えば早速、
世界が恐々としているタリフマン・トランプ大統領がその関税(タリフ)というカードを使って、市場を混乱に陥れた形となりました。
具体的にはまずカナダとメキシコそして中国に対して、予定通り関税を引き上げると宣言したことで週明け3日は対象国通貨をはじめとして、次のターゲットと目されているEUの通貨ユーロが大きくギャップを空けて下落(当該通貨の下落)したあと、カナダとメキシコに対しては1か月間の猶予が決まったことで巻き戻しが入り、ギャップを概ね埋めてしまう往来相場となっています。
※市場混乱を伝えるロイター社の3日記事をキャプチャー
今回のテーマである「市場の鼓動」とは、あるイベントが発生した際の市場の反応を指していますが、何をし出かすか不確実なトランプ政権に対してや、関税対象国への影響に対するコンセンサス(主導的な見方)が定まらない昨今において、市場の鼓動は一つのシグナルになり得ます。
具体的には例えば、アメリカの金利が下がりそうだというコンセンサスがある場合、ドルは売られ気味に推移するというシナリオが一般的ですが、実際にそうした動きになっていれば「市場の鼓動」は正常だと言えます。
しかし、同様な状況で同じコンセンサスがあるにも関わらず、例えばドルが一向に下落しないという「市場の鼓動」が見られた時は異常な状態だと考えられ、もしかすると既に下げる余地は残り少ない或いは今回の利下げは見送られるか?などの推測に繋がり、コンセンサス自体に変化が出始めている可能性を疑える、という訳です。
ところで、アメリカが他国からの輸入関税を引き上げる行為は米国内に物価高をもたらし、輸入製品の数量自体も制限される可能性が高いとすると、米国内の物価高に拍車を掛けかねない…というのが今のところのコンセンサスですが、逆に買い控えなどで景況感が下がるためインフレは一時的といった論調もあるようです。
一方、関税を引き上げられた輸出国への影響も相場の行方を占う上で重要ですが、こちら側のコンセンサスは輸出が行き詰まると国内景気が悪化する中、対抗策を講じれば米国内同様の物価高にいたる…というのが一般的でしょうか。
つまり、双方ともに悪影響が出る可能性が高いとすると余計に、「じゃあどっちなの?」というのが、現在の混沌とした相場に繋がっているのだとすれば、そこは相場に聞いてみるしかない…ということになります。
ですから、今回の「関税引き上げ決定からの中断(以降、関税劇場第一幕という)」を通じて聞くことができた市場の鼓動は、今後のヒントになり得るかも知れません。
結果としては、対象国への影響の方が強いと判断され、対象通貨が売られた訳ですから、今後も例えば交渉決裂などといった事態や新たな対象国が登場した際は、同様に対象国通貨が売られる可能性がある…という引き出しを持っておくべきでしょう。
確かに、将来的な米国内のインフレを想定した金利上昇が、ドルの裁定買いとなった可能性も否めませんが、実際の米10年債は大きな動きもなく、現にドル円は僅かながらでも円高方向へギャップしていますから、ドル買いではなく対象国売りと考えた方が理にかなっていますね。
ここで、今回の関税劇場第一幕でドル円は僅かでも円高にギャップしたという市場の鼓動が聞けた意味について、もう少し踏み込むと、
周知の通り、カナダもメキシコも日本企業が多く進出していて、米国輸出の迂回地になっているのは懸念材料だったのは確かで、それらのクロス円の売りが今回の円高にギャップした背景の一部だというのは順当ではありますが、
もう少しザックリと言ってしまうと、今後も米国が切るだろう関税というカードは、対象国がどこであれ、日本(円)に対してはリスク回避先になり得る、ということは覚えておく価値がありそうです。
つまり今のところ、具体的な矛先が日本に向けられない限り、日本と円はアメリカとドルに対して暫くは中立でいられる公算が高く、現に今回の関税劇場第一幕以降のドル円日足は結局、上下にヒゲを付けて方向感が出ることなく正に中立を保ったことは裏付けになります。
そこで今週末に予定されている日米首脳会談がもし、藪蛇的な事態(変なところに立ち入らなければヘビからは攻撃されなかったものを…)に発展した場合ですが、今回の関税劇場を通じて、攻撃対象国に挙がった通貨が売られたことで円安が想定できる一方で、
リスク回避の円買い(というよりこの場合はむしろ、本邦勢による海外投資の解消)もあり得ることが市場の鼓動で示唆されましたら、米金利を見つつも過度な円安の動きに前のめりで追随するにはリスクが伴うことを、学べたかもしれません。
このように、予想しにくいイベントや突発的なイベントに対して、直後の「市場の鼓動」には方向性へのヒントが隠れている場合も少なくないため、是非ご記憶いただければと思います。
浅野 敏郎