6月最初の寄稿です。
NHKのNEWS WEBによりますと、
4月末から5月にかけた介入額は、9.7兆円を超える規模だった事が財務省の発表で判明したと
先月末に報道がありました。
※当該ニュース記事の画像をキャプチャー
かねてから介入規模は8兆円という数字が聞こえていましたが、はるかに大規模でした。
介入時のドル円レート平均値を例えば156円だとすると、
9.7兆円÷156円=62,179百万ドルのドル売り円買い介入でした。
2022年にも一度、同規模のドル売り円買い介入があったことは記憶に新しいところですが、
逆のドル買い円売り介入は新しいところで2011年、3・11地震以降にありました。
その介入規模は14兆円前後とされており、介入レートの平均値を88円だとすると
14兆円÷88円=159,090百万ドルのドル買い円売り介入だったことになります。
この時に買ったドルの一部で今回のドル売り円買い介入を行ったとすれば、
ドルの価格差は156円-88円=68円ですから、
68円×62,179百万ドル=4.228兆円の収益を上げたことになります。
実際はここまで単純ではないものの介入と聞くと、湯水のように財政を使っている印象がありますが、
実はドル売り介入は円を投じているのではなく円に転じていることになり、一方的に円を使い込んでいるのでは無くさらに、
常に通貨安で苦しんでいる某国が、外貨準備も乏しい中で自国通貨を買うしかできない操作とは意味が違う、ということを知っておくと印象もまた違ってくるのではないでしょうか。
数字の感覚がマヒしてきたので、この辺で本題に参りましょう!
こちらのブログでもここまで、幾度か相場分析をお送りしました。
2023年末の総括や、近いところでは2月に寄稿していますが、
本年の介入以降は未だだったうえに本年の中央月に入ったこともあり、一度押さえておこうと思います。
2022年10月に政府が行ったドル売り円買い介入時の高値はおよそ151.94円でしたが、
以降は2023年11月の戻り高値が151.90円
そして本年の3月高値が151.97円と
152円の上値が介入警戒感で重かったことはつい先日のことのようです。
それがとうとう4月10日に152円台に突入すると、僅か14日間で160.20円水準へと上昇し、再度ドル売り介入に遭う
といった展開でした。
※Trading View社のチャートをベースに作成しました
こちらは週足のドル円チャートです。
左端には2022年の介入時高値があり、その高値に引かれた水平ラインが152円水準ですが、
実は昨年の11月にこの水準へ近づいたとき、身近な方には、
「もしここを突破した場合、160円までは早い可能性がある」旨、申し上げていました。
根拠としてはチャートに引かれた無数の水平線の密度が、152円以上は急に荒くなっており、
目ぼしいレジスタンスは、次の実線ラインの153.57円で、以降は160.40円まで殆ど無かったからでした。
同様に考えると、
もし今回の介入時高値を越えて160.40円のヘビーなレジスタンスをも超えた場合、
次のヘビーなレジスタンスは164.48円で、その上は何と177.04円まで無い事になります。
この水準での抵抗ラインが少ないのは、実はプラザ合意以降の超円高時代で相場は直線的に下落した結果、
波動の逆行で出来るサポートやレジスタンスが見当たらないのが理由で、以降初めてその水準へと戻してきているところ、だという訳です。
今回、160.20円で上げ止められた直ぐ裏の160.40円ラインは2022年の介入時より以前から引かれていることが見て判りますが、
その起点は1990年4月に付けた数少ない戻り高値であり、いわゆる「34年振りの円安」と言われる所以になっています。
ではもし160.40円を超えた場合、前回同様に上げ足が早まるかどうかは疑問ですが、最初に152円に接近してから上に抜けるまでには20か月を要しており、次回もそのように機が熟した後であれば急騰もあり得る…という事になりそうです。
ではもう少し現実的に日足で状況把握をしておきます。
※Trading View社のチャートをベースに作成しました
4月29日の介入時高値160.20円(R5)と5月3日の安値151.85円(S4)までの押し波動は、今後暫くの「くさび」として目安になります。
一つの考え方ですが、この高値安値の半値となる156.03円(R2)は、「くさび」をどちらかにレンジアウトするまでの相場センチメントが、上げと下げのどちらにあるかの目安になります。
例えば、昨日6月4日までの10日間はこの半値より上で推移出来ていたことから、ドル買いのセンチメントがまだ優勢でしたが、昨日はその半値を割り込んで終わったため、
現状「大きな高値もみ合い」である「くさび」の値幅間のセンチメントは、弱気に転換したという訳です。
ただあくまで、高値もみ合いの間での話…で、相場の方向が出るのは「くさび」をどちらかに抜ける必要がありますから、それまでは長期上昇相場の調整という立ち位置が無難でしょう。
今後暫く、どのように揉み合うかがテーマになりますが、ザックリ言ってしまうと3通り、
①半値を中心に三角保ち合い
②半値を天井に下半分で推移
③半値を底に上半分で推移
となりますが、半値を割り込んで来た以上は、③は半値を回復してから考えれば良く、それまでは①か②という観点で目先の相場を見ていくと良いかも知れません。
R5:160.20(2024/4/29高値)
R4:157.71(2024/5/29高値)
R3:156.78(2024/5/14高値)
R2:156.03(くさび半値)
R1:155.80(1990/6高値)
現在値:154.83(2024/6/4終値)
S1:153.60(2024/5/16安値)
S2:153.57(1987/7高値)
S3:152.01(1986/9安値)
S4:151.85(2024/5/3安値)
※大外(S4とR5)が「くさび」になるよう設定しています。レートが近い場合はゾーンで捉えると良い場合があります。
※あくまでテクニカル分析です、日米の金融政策変更で急変する可能性があります。
※S/Rの各レートはSは買い、Rは売りという意味ではなく、越えると目先の勢いが強まる場合や、一度超えるとSはRに、RはSになり得ます。
浅野 敏郎