それにしても暑い毎日が続きます。
つい先日まで暑く感じていた20度台後半の気温が早や冷房の設定値となり、設定温度に達していなくても涼しく感じてしまうのは妙な気がします。
少しずつ変化してくれれば体や心の準備のしようもありますが、コメの価格同様あまりの急激な変化は、必要以上のダメージ感を伴いますから、あまり歓迎はできませんね。
今週末の21日は夏至だそうですが、普段であれば雨雲に覆われてお日様パワーも低下するところ、もし晴天となれば夏至のフルパワーを受けてしまう可能性もあり、警戒が必要です。
ところで、相変わらず世界がトランプ氏の一挙手一投足に振り回されていますが、
※YouTube版日テレNEWSから、デモの様子部分をキャプチャー
過度な不法移民強制摘発に端を発した抗議デモは全米に拡散する中、34年振りに強行された軍事パレードへの反対デモとも共鳴したことで、週末に報道されたアメリカの映像はもはや、これが経済大国ナンバーワンのアメリカなのかと目を覆いたくなるほどのカオスでしたし、
加えて、月初にアメリカの反対で流れてしまった国連のガザ停戦決議から間もない先週末に、今度はイスラエルがイランを攻撃したことをキッカケにイランが報復するなど、アメリカの特にトランプ政権下のイスラエルはまたもや狂犬的な行動に出ました。
このような週末リスクが顕在化したことで、個人的には週明け16日の金融市場は「アメリカのトリプル安」を連想していたのですが、蓋が開いてみれば、債券を除く為替と株はドル高、株高で始まりました。
2日間をこなしたここまでの結果は、株高はさすがに進まなかったものの、特に為替についてはその基調に大きな変化はなく、アメリカ売りを想定していた自分としてはそれだけでも充分にサプライズな値動きになっており、
更にトランプ氏はG7を早退し、イランの首都テヘランから退避を呼び掛けてもなお、今のところ市場は不気味な平静さを保ち、ドルだけ強い状況が謎にも思えてきます。
市場関係の為替ニュースでは、リスク回避のドル買いといった理由も散見されていますが、経済的に一番ハイリスクな米ドルが、有事の逃避先になるとは考えにくく、何かを見落としていないか整理したいと思っています。
さて、今回のテーマである転売について、日本ではしばしば問題になるケースがあり、近いところでは音楽ユニット「嵐」のコンサートチケットや、MLB公式戦の東京ゲームチケット、そして今でも続くおコメや最近では任天堂スイッチ2などが挙げられます。
転売の善悪は対象となるモノによって異なりそうですし、今回のコメ騒動では本当に転売家が実在したかどうかも明白ではない中、転売家を正当化したどなたかが炎上したといった記憶もあります。
ただ、相場を相手にしている我々トレーダーは大小の規模の違いこそあれ、正にこの転売を前提に取引をしているため、私としても転売が即、悪と言われると多少の抵抗感はぬぐえず、確か、転売をまっとうな資本主義と謳ってしくじった観があるかの方に対しては、ある意味では同感する部分はあります。
例えば、転売を平たく解釈した場合、おコメに限らずいわゆる卸業者や小売り業者は一種の転売業でもありますし、もっと言えば原則的な貿易業も然りだと思いますが、この平たい意味においては、買い付けた値段にコストや自己の利益を乗せて転売(販売)するのは当然の経済活動だからです。
ただ、先にも述べたように、対象となるモノで善悪は異なるという観点でいうと、本当に暴利だけを目的としたコメの転売家が存在していたのであれば、食の根本でもあることから悪行の部類に入るのは確かで、
つまり消費者にとって、おコメのような主食となると、高すぎるから買わないとか、価格が2倍になったから食べる量を半分にすることができないところが、悪行たる所以だと思っています。
しかし、ここで忘れていけないのは、一般的に転売が成立するということは必ず、買い手が存在するということで、しばしば問題になる転売家の存在は、その買い手の責任も含めて議論する余地はあるかと思います。
さてさて現在、
政府はおコメが高騰した原因探しに躍起になっていますが、ここまで色々と二次情報を調べる範囲での私の結論は、おコメが高騰した理由は特になく、単純な経済活動の結果だと思っており、ただ一点の問題は商品があったにもかかわらず、流通経路のどこかで販売調整があったかも知れないというだけです。
事実、コロナ禍真っ只中でおコメはダブついており、あくまで想像ですがザックリ言えば、値上がりの初動はウクライナ戦争による小麦価格が高騰したことで安かったおコメが注目され、自然災害やその予報などで個人備蓄が増えて小売りがやや品薄になる中、値上がりを見据えた外食産業などが量の確保に動いて仲卸段階で争奪戦になって価格が上昇し、昨年の不作で一気に争奪戦が過熱して小売りから品物が消えた…といったところではないでしょうか。
流通経路での販売調整については、買値以下では売れない事情が絡んでいたと推測でき、既に値上がりしたものを仕入れた場合はなおさらです。
これはトレードの世界でも買いコスト以下で相場が推移した場合、なかなか損切ができないのと同じ心理だと思われ、安く仕入れたモノの高騰を狙っていたわけではないと思うのです。
急に小売りに出回り出したモノは、もしかするとまだ利益が望める仕入れ価格分または、早めに損切を決断したモノなのかも知れませんね。
ただ、もしそうだとするならこの段階でも悪者は存在しないことになり、重量もあり生鮮食品である「コメの転売ヤー」はやはり架空の存在だった可能性はあり得ると考えています。
だとした場合、政府が行う備蓄米放出はまだ良いとして、輸入してまで市場にじゃぶじゃぶにコメを入れるやり方は一見、品薄感を解消する点ではスピーディーで評価できそうですが、たまたま高値を掴んでしまった事業者が政府の方策で劇的な赤字を被った場合、その責任問題はまさしく政府となり、これは為替介入によって投機家を抹消する目的とは違うと思います。
私たちトレーダー(意味的には投機家)はその辺も理解して差益を狙っている訳なので「介入にやられた…」だけで済むのですが、前述のような想定に立てば、誰もが実勢に合わせて生業をまっとうしただけで、そうした方々がコメ介入で大損失を被るのは筋が違うと思うのですが、皆様はどう思われますか?
お仕舞いに、
私は農水族の味方をする意思は全くありませんが、食の安全保障を考えた場合、唯一おコメだけは自給率100%がまだ可能な地合いにあり、これはもはや一産業の問題というより国家の問題である以上、国家が生産者や流通を守ることは必要で、ただ過保護はダメだということでしょう。
政府が備蓄米で儲けた差益と消費税分ぐらいは、高値掴みで苦しんでいるまっとうな事業者救済に使っても、だれも文句は言わないと思いますが、そのためには早々に実態を解明し丁寧な説明が大前提なのかも知れません。
浅野敏郎
P.S.
農業や漁業は投資以上にリスク市場だと考えており、人間が生きてゆく根本に必要な産業が何とリスクの上に成り立っています。不作や不漁、豊作や豊漁に左右されながら日本の食卓を支えてくださる業界には感謝すると同時に、目先の値段だけで進むべき方向を誤らないようにしたいと自戒しながら、あくまで個人的な思いではありますが、もしかすると適切な農林水産政策は、あらゆる福祉問題よりも重い、根本の課題なのかも知れません。
政府は、C国に対して相変わらず熱心に海産物輸入再開を訴えていらっしゃるようですが、その結果、魚までもがスーパーから消えるようなことだけは無いようにお願いします。