社員通信

「思考の基準」を見い出して相場を追いかける意義

今月最初の投稿ですが、とうとう師走に突入し各メディアの報道も年末を意識した話題が急に増えた感じがします。

今週末から冬らしい気候になるとの予報もあり、外出にはそれなりの気合を入れないと寒さに負けて出不精になってしまいそうな日々が待っているようです。

※出処はあの「いらすとや」さんです、いつもお世話になっております

 
さて本題に入る前に、
史上最長の長きにわたってアメリカの政府機関閉鎖が終わって暫くが経ち、為替の動向を探るのに参考になるCFTCのIMMポジションレポートも再開された訳ですが、中止期間のレポートがバックバリュー(過去の発表予定時データという意味です)で順次公表され、通常に戻る2026年1月23日公表分までは、週に火曜と金曜(アメリカ曜日)の2回に渡って公表しながら順延分を埋めていく模様です。

例えば今週で考えると、
日本時間3日水曜日の早朝に10月24日公表分のデータが、6日土曜日早朝に10月31日公表分のデータが公表され、本来今週末に公表される12月2日火曜日終了時データは何と日本時間12月24日水曜早朝に順延されます。

CFTCのWebサイト(https://www.cftc.gov/MarketReports/CommitmentsofTraders/index.htm)の修正版予定表をキャプチャー致しましたので、よろしければご参照ください。
左列はデータ集計日、中列が本来公表される予定だった日にち、右列がリスケされた公表予定日です。

※画像を直接右クリック→「新しいタブで画像を開く」で多少拡大して閲覧できます
出来れば最新データを早く見たい気もしますが、リアルなデータが見られるのはもう少し先のようです。

ちなみに、
私が経済指標カレンダーで重宝させていただいているInvesting.comでもデータの記録が再開されていますが、内容と公表の日時が混同されているようで、最新データは過去のモノですから暫くご注意ください。(2025年12月2日時点‐当該サイトとの利害関係はありません)

 
さて本題ですが、タイトルにも書きました「思考の基準」について、

相場初心者の方々は「日々上下する相場で、売った方が良いか買ったほうが良いかの判断が判らない」というお悩みをお持ちですが、そこで、概ね最初に出会うテクニカル手法として、理論的にも納得しやすく実際に利用する方も多い「移動平均線」をあえて例に出しますと・・・、

確かに、その場その場の取引価格はいずれ平均値に近づくとするなら、過去数期間の平均値より今の値が高い場合は売り低い場合は買うなどの売買方向を感じられる側面はあり、乖離として利用するなど「思考の基準」にされている一方で、

例えば平均値より高い相場が継続する場合は強い買い相場であることからトレンドとして捉え、その方向を「思考の基準」とする場合もあるでしょう。

つまり、同じテクニカルにも拘らず、使い方の選択を間違うと損失への道をまっしぐら…という矛盾が常につきまとうところが、判断に迷う原因と言えそうです。

また、参照する足の期間によって、1分足は買い、5分足は売り、15分足は買い、30分足は売りなどのように、時間の軸によって同じ相場で異なる方向性が示されると尚一層、混乱してしまうのでしょう。

別段、移動平均線の手法を悪く言うつもりもなく、機能する場合と機能しない場合はどんな手法にも等しく存在しますし、多くのオシレータ系指標は移動平均線の派生であることも事実ですから、無視はできないのですが、

一つだけ言えることは、例えば1分足の3本平均、5本平均、10本平均…、5分足の3本平均、5本平均、10本平均…というように、○分足の□本平均は無数に存在するため、どれかはその時の値動きにマッチしているはずですから、結局はその宝探しになるばかりか、局面が違えばそれも通用しないわけですから、判断がつかないのも当然かも知れません。

このように、初めて出会う可能性が高いテクニカル指標がかなり流動的なものだと、冒頭の悩みに直結しても仕方ないのですが、このような手法を選ぶ場合は、ご自身の絶対的な基準とする○分足の□本平均を先ず定めて、基準には絶対に逆らわないエントリーを探せば取り組む方向が絞られ、「売ってもダメ、買ってもダメ」という状況は随分と限られてくるハズです。

ただし、短か過ぎる足の時間軸と範囲を選択すると、売買方向も目まぐるしく変化しますから、振り回されやすいことにはご注意ください。

 
実はかく言う私も、
一通り通ってきた道ですが辿り着いた思考として、「時間が経過しても変わらない事実を重視」することを基本としています。

それは簡単に言うと過去の安値や高値、終値などのことで、優先順位が低い順で言えば、一時間前の足の、一日前の足の、一週前の足の、一月前の足の、年間の、史上の…となりますが、もっと踏み込んで言うと「これらが含まれる波動」そのものです。

一度決まったこうした過去の値や波動は永久に変わらないものとしてチャートに記録される訳ですが、現行足のみがこうした記録を更新できることから、その瞬間にこそトレード機会があるとも言えます。

「何だ、ただのブレークアウトじゃん」と言われれば確かにそうなのですが、複数の過去の事実を確認することで、追いかけるべきか追いかけないべきかなどの基準も持つことができます。

例えば、
一本前の時間足高値を越えるタイミングで単純に追いかける場合と、それが週足や日足の高値と同じだった場合に追いかけるのとでは話が違います。

もちろん、どんな場合でも「ダマシ」はあり得ますが、もし日足や週足を見ている腰が据わったトレーダーたちも、この同じ瞬間を捉えに来る可能性があるとするなら、通常よりパワフルな力が掛かることが期待できますね。

あるいは、もしこの瞬間の少し先の上値に、例えば月足の高値が控えていることが予め判っていたとすれば、この瞬間の選択肢は「見送る」か、取り組むとしても「早めに利食う」か「月足高値の更新に掛ける」かの判断に絞ることができるなど、

ノープランでただブレークアウトを追いかけるのとは意義が違うと思うのです。

また「これらが含まれる波動」という意味として、

例えば今、上昇(買い)だと判断している場合、この上昇はいつから、幾らから始まっているかを確認することであり、もっと俯瞰すると、その前の逆波動はどうなっているかを確認する事にもなります。

つまり、上昇の直前の波動は必ず下落で、この逆波動の起点高値が今の上昇のターゲットになっている可能性が充分にある訳ですが、この高値を予め認識できるのは、ほとんどのテクニカル手法やオシレーターでは不可能なのですね。

また、1日、1週間、1か月、1年などという区切られた足の時間は、チャートを描く際の都合でしかないことも「思考の基準」に置くべきです。

例えば年間の高値に近づいた際、「さすがにこのレベルは重たいだろう」と人によっては逆張りを考えるかも知れませんが、

この年間高値が実は昨年から続く下落波動の途中で切り取られただけの場合、この年間高値は年度の切り替わりという都合でできたものに過ぎず、本来の「時間が経過しても変わらない事実」にあたるのは、昨年から続く下落波動の起点高値なのだということが正に、「これらが含まれる波動」を重視する意味であり、

このことが認識できていれば先ず、逆張りという判断自体があり得ないという訳です。

 
ということで「思考の基準」について持論を展開させていただきましたが、文字だけでは理解しにくいかも知れない内容になってしまい、図示などを用いた説明は今後の機会に委ねるとして…

お仕舞いに、2025年は何と言っても、為替より株の年でした。

2025年のドル円相場を月足でみると

※Trading View社のチャートをベースに作成しました
※前回に使用したチャートと同じレイアウトです

年初の最高値(これは年間高値であると同時に波動の高値でもあります)から4月の最安値(これも年間安値であると同時に波動の安値であり、その前の上昇波動の安値と近似値でもあります)までの下落と、

直近の上昇波動による往来相場(行って来い)で終わることが概ね決まりました。

一つ一つの波動の値幅が大きかったとはいえ年間では結局、方向性は無かったと言い切れそうです。

一方で本年の日本株市場を同じく月足で表示すると、

※Trading View社のチャートをベースに作成しました
※先物ではなく純粋なIndexのチャートです

日経平均を見る限り、4月にはビックリ相場こそあったものの、その安値から見れば一時的にも22,000円近い上昇を見ましたから、2013年に10,000円台を回復して以降の最大上昇幅と史上最高値更新相場の中に居る1年でした。

特に史上最高値を更新し続ける相場では、本日のテーマだった「時間が経過しても変わらない事実」は高値側には存在しない状態でしたから、終盤はそれなりに盲目的にならざるを得なかった点は難しかったようにも思います。

4月以来、ここに来てやっと押し目らしい押し目ができ、11月の高値安値が当面の基準(ちなみに、10月足の半値水準が11月安値)になりますが、その下側となると余りに一方的な上昇をしてきた分、2024年の中心的な揉み合い高値の40,000円付近、あるいは同年7月の上ヒゲ高値の42,400円付近のみが、大きな意味での「時間が経過しても変わらない事実」となります。

もちろん、足の期間を短くすればそれなりの高値安値は存在しますが、大雑把な想定では「山高ければ谷深し」という最悪のシナリオも念頭に置く状況であることは改めてご認識いただき、決済や新規共に「こうなればこうする」といった各自の「思考の基準」を大切にして臨んでいただければと思います。

 
 
浅野 敏郎

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