「投資の学校」浅野敏郎です。
今回タイトルにしたこの1週間は、
じつに様々な出来事が重なり、
特にFX(外国為替)を取引している方々は
悲喜交々(ひきこもごも)だったと察します。
日本では、
この週の頭はシルバーウイーク前半の終わり
そしてお尻はシルバーウイーク後半の始まり
となって、市場が比較的薄かった可能性がある上に、
世界的にも注目された重要な経済指標の発表が
まさに目白押しだったことに加えて、
突発的なイベントが更に重なったという印象でした。
備忘録を兼ねて、
この1週間を肝に銘じておこうと思います。
この1週間が重要だった点は、
世界中で進行しているインフレへの各国の対応に、
変化があるかどうかが注目されました。
まずイベントを並べてみますと、
19日(月)
・日本は祝日
・アメリカ10年債の利回りが3.5%を超えて
戻り最高値を更新
20日(火)
・日本のCPI発表 コア指数が前年比で2%台を維持
・ロシア軍事動員に大統領署名
21日(水)
・2か月ぶりFOMCで予想通りFFレート0.75%引き上げ3.25%へ
(日本時間22日03:00)
アメリカFRB外観:OANDA社ウェブサイトよりキャプチャー
22日(木)
・日銀政策金利発表 予想通り現状維持
・介入の噂で小幅急落
・総裁会見 不退転の決意を表明
・SNB政策金利を0.75%引き上げ+0.5%へ
・政府、為替介入を公表
・BOE政策金利を0.5%引き上げ2.25%へ
イングランド中央銀行外観:ダイヤモンド社オンライン記事よりキャプチャー
23日(金)
・日本は祝日
と言ったところでしょうか。
もちろん、全てを網羅していませんが、
実は今月8日(木)にはECBが連続して2回目の利上げに踏み切り
ECB外観:ブルームバーグ社記事よりキャプチャー
しかも2回目は0.75%引き上げたという経緯があったので
余計に先進国の対応が注目されていました。
結果から言いますと、
日本以外は全て利上げを断行し、
日本円との金利差が一層顕著になった訳ですが、
22日のドタバタ相場には正直、閉口しました。
そのキックオフ的出来事は
日銀の政策維持が発表された直後でしたね。
それまで上値を押さえていた145円が突破され
145.40付近まで急伸した矢先、
一気に143円中盤まで下落するなど一瞬、目を疑いました。
結局、この乱高下の原因は介入の「噂」だったようですが
FOMC発表後の下値には届かず、正体が判明していくに連れて、
底堅く推移。
そんな中で、黒田総裁の会見は単なる現状維持の枠を超え
不退転の強い決意を感じましたが、
BOJ外観:日本銀行ホームサイトの動画よりキャプチャー
市場もそのように受け止めたのか昼の当日高値を更新して、
スイス中銀の発表を迎えるところでしたが、
17時過ぎに政府から直接介入の公表があり、
一気に140円台まで下落したことで、
すっかり白けてしまいました。
政府筋としては、
黒田総裁会見の内容と、ECBやFOMCの結果、そして
正にスイスとイギリスの中銀が、
これから利上げをする可能性が高い状況下で、
スイス中央銀行外観:ロイター社記事よりキャプチャー
単独介入は「今しかない」と考えた経緯は
目に浮かびます。
逆に私は17:00を過ぎる直前で、
「翌23日は日本の祝日でもあり、ここまで何もなければ
介入リスクは無し」
と判断して相場を離れた直後の事でしたので、
正に5分の差で、けん制タッチアウトを食らった心境でした。
大谷選手MLBオールスターで出塁後のけん制アウト:日刊スポーツ記事よりキャプチャー
ヘッドラインを読み返すと、
かなり早い段階で
「ステルス介入も選択肢」的なコメントも見られ、
政府は22日がキーになると考えていたことを
察知できなかった私の負けです。
相場は17:00から急落しましたが、
恐らく実際はもっと前にステルス介入を行い、
効果が見られなかったため、
あえて17:00過ぎに不意を突く形で公表に踏み切った
というところでしょう。
或いは145円を超える前、
価格の動きが変だった期間があり、
かの「噂」は実はステルス介入だった可能性も考えられます。
さて、
過ぎたことは過ぎたことですので
恨み節はこの辺にして、今後の可能性について、
為替介入のことを、報道では日銀介入とも言われていますが
実は財務省の管轄です。
政府には金融機能がないため、
金融機能を持っている日銀に事務局を依頼している形です。
つまり、物価に責任を負っている日銀は、
まだ実質CPIがギリギリ2%を維持している以上、
緩和姿勢を解除する根拠もなく、
他国との立場の違いを貫いています。
イールドカーブコントロールもその最たる行動ですが、
海外から見てみれば同じ日本の行動です。
債券を無制限に購入して金利を抑制する一方で、
円安は困ると言いながら円買い介入をする日本って
自己矛盾も甚だしい筋が通らない国に見えないでしょうか。
管轄が異なることで、こうした矛盾が発生するのですが、
矛盾はやがて大きなほころびになることが心配され、
世界中のヘッジファンドは常にこうした矛盾を探しています。
このままでは遅かれ早かれ的になるのでは、と危惧します。
お仕舞いに、
各国中央銀行は利上げに踏み切っていますが、
比較的好調を維持しているアメリカはまだしも
その他の国は景気後退を覚悟した暴挙にも見え、
利上げした通貨はことごとく売られているのも
その裏付けのような気もします。
ロシア要因は確かに想定外なのかも知れませんが、
なぜ物価が高騰しているのかを冷静に考えれば、
本当に利上げなのだろうか?
という疑問も頭に浮かびますね。
緩和維持で頑張っている間に、
日本政府にはそれを活かせる国策を願うばかりです。
そして相場的には、
円が独歩安というイメージが作り出されていますが、
冷静に2022年の高値安値を並べてみると、
ドル円
113.60~145.90円(3230pips)
ポンドドル
1.3748~1.0834(2914pips)
ユーロドル
1.1494~0.9667(1827pips)
となり、確かに円の下落幅は大きいものの、
要するにドル高です。
ドル円が頭打ちならば、別の通貨でドル高を目指すのも
FXトレードにおいては有効に見えなくもありません。
浅野敏郎
P.S.急に思い立った今回の投稿はあまり時間がなく文章も雑になってしまいましたが、懐疑的だった介入への怒り?をどうしても伝えたくて掲載させていただきました、乱文を予めお詫びいたします。(2022年9月25日記)
翌週の26日はドル買いが噴出。ドル円は介入の影響で顕著なドル買いにはならなかった一方で、ポンドやユーロでドル買いが急伸しました。当コラム?をタイムリーにお伝え出来なかったことは悔やまれますが、トレードで唯一、ラッキーかアンラッキーがあるとすれば、こうしたタイミングに居合わすことが出来たか出来なかったか…ということになりそうです。介入について黒田総裁は矛盾を否定していますが、財務省のマウントを取るのには充分過ぎるイベントでした。また、ポンドの急落は単なるドル高というよりはむしろ、イギリス国内の政策矛盾でポンドからあらゆる通貨へ資金流失が巻き起こったのが原因、とされています。が、結局はヘッジファンドがネタを根拠にポンドを潰しに掛かったのが恐らく直接のトリガーで、云々と言った原因探しは後付けの可能性が高いと思います。(2022年9月26日追記)