前回の投稿では、メジャー通貨である
米ドル、ユーロ、円、英ポンドのインデックスをチャートで比較し
2022年は一般的に超円安相場だったと言われていたところ、
実は超ドル高相場だった事実を確認しました。
※前回記事はこちら
そしてその後、2022年後半からドルのインデックスは天井を付けて
下落に転じた流れがドル安として継続し、
2023年2月から再度ドルが強めに推移して現在に至っています。
ところで、世界中に流通していて且つ自由に取引できる通貨の中で
※MUFG信託銀行サイトよりキャプチャ 人民元が見えていますがこれは自由に取引できない管理通貨ですね
最も取引額が多いのは基軸通貨である米ドルであることは
皆さんもご存じとは思いますが、
その米ドルの強弱を示す指標として「ドルインデックス」があり、
原則として、ドル以外の通貨との強弱で表すことから
ドルインデックスの変動そのものは、
ドル以外の通貨の強弱とは相反する傾向があります。
つまり、
ドル以外の通貨価値が高くなればドルの価値(インデックス)は弱くなり、
ドル以外の通貨価値が低くなればドルの価値(インデックス)は強くなります。
※Powered by TradingView
当たり前の話といえばそれまでですが、添付のチャートは、
以前にも掲載した各メジャー通貨のインデックスで、
2022年のドル高のピークを左端のゼロ起点にして表示しています。
オレンジ色のドルインデックスが下落している局面では、
他のメジャー通貨は上昇している一方、
直近のドルは強めに推移していることから、
他のメジャー通貨が下落気味に推移していることが判ります。
そろそろ本題に入っていきますね(汗) 。
ドルインデックスと言っても実は幾つかの種類があり、
どれが最も正確に為替相場を表現できているかは
正直なところ私も考えが及ばないところなのですが、
インデックスの種類の違いは、
米ドル以外の通貨として何を対象にしているかの違いです。
恐らくTradingViewのインデックスチャートは、
ICEのデータがベースになっていると思うのですが、
ICE(インターコンチネンタル取引所)のドルインデックスは
ユーロ(57.6%)
日本円(13.6%)
英ポンド(11.9%)
加ドル(9.1%)
スウェーデン・クローナ(4.2%)
スイス・フラン(3.6%)
の僅か6通貨で構成されていて、括弧書きの数値が構成比率です。
これら6通貨の対ドルの価値を各構成比率分にしたその合計が
ドルインデックスだという訳ですが、
ドルの次に流通量が多いとされる通貨ユーロの構成比率は何と
57.6%にも及ぶため、つまりはユーロドル相場を見ていれば、
ドルの強弱がそのまま理解できるといっても過言ではありません。
添付チャートでは、米ドルがオレンジ、ユーロが緑ですが、
ほぼ完全に逆相関になっていることが判ります。
しばしば金や原油がユーロとの相関性が高いと言われますが、
ユーロは米ドルの真裏返しな訳ですから、ある意味で当然なのです。
極端に言ってしまえば、ユーロドルでドル買いになれば
ドル円やポンドドルでもドルを買えばよく、その逆も然りです。
厳密には連動しやすい局面としにくい局面がしばしばありますが、
対ドル相場(ストレート通貨ペア)は概ねこのような関係で総括できます。
そこで、 連動しにくい局面とは? というところで、
いよいよ話をクロス通貨ペアに移しますが、
対ドル以外の通貨ペア(通貨と通貨の組合わせ)を全般的にクロスペアといい、
ユーロ円やポンド円などドルを介さない対円通貨ペアの総称を特に
クロス円と言います。
ユーロ円を例にとると、先ほどのインデックスチャートでは、
青の円インデックスと緑のユーロインデックスの組み合わせです。
このインデックスチャートを相場としてみるなら、
最もわかりやすい場面として、この2本のラインの開きが
拡大しているときは上昇通貨を買い下落通貨を売れば良く
縮小しているときは下落通貨を売り上昇通貨を買えば良い訳です。
もちろん、ユーロポンドというクロスの場合は、緑とピンクの関係になりますね。
で、ユーロ円を取引するということは、
対ドルでは概ね同じように動いている中で、
この2通貨間の微妙な強弱関係に合わせて売買する必要がある
ということになるのです。
ましてや、共に下がりながら開きは拡大する場合もあれば、
共に上昇しながら開きは縮小する場合もあり、状況は複雑です。
例えば、先ほどのインデックスチャートにA~Dまでの枠を付けましたが、
※Powered by TradingView
A,C,Dのユーロと円の関係は拡大しているので、
下の黒いグラフであるユーロ円相場は上昇(ユーロ高円安)
Bは縮小しているのでユーロ円相場は下落(円高ユーロ安)しています。
数年前、一時的にポンド円が流行ったことがありましたが、その理由として、
ドル以外の構成通貨の2位と3位の比較になり、共に10%強と似た者同士なので、
ユーロがどっしりとして動かない中で、
円とポンドが地政学的な理由などで独自の動きをした場合、
拡大や縮小の濃淡が明白に出やすい分、
相場変動として認識しやすく、値幅も大きくなり易い側面が指摘できそうです。
締めくくりとして、
ユーロ円やポンド円の値動きを一般的なチャートに表すことは当然できますし
それを基に取引機会は見いだせることも確かで、否定するつもりもありませんが、
ただ、対ドル相場では原則的に同じ流れになり易いという大前提あるのに、
わざわざ複雑で比較的短命な値動きのアヤを取引機会にするクロスより、
そのまま対ドルでの大きな流れを把握し、
素直にその流れに沿ったストレートでの取引が最も確実ではないか??
というのが私の見解になります。
浅野敏郎
P.S.
インデックスの比較でクロスの関係を見ることで、短期売買に臨むのは
基本的に難しいと思います。それはその状態が長く続き、確認してから
取り組んでも間に合うような類ではないからです。
もし間に合うとすれば、ユーロやポンドが動かない日本時間の日中に
ドル円の動きのみでクロス円が上下する場合があり、その場合はドル円を
売買するつもりでクロス円を取引した方が円価のボラティリティは大きく
なり、メリットとなる場合があり得ます。