社員通信

アメリカの債務上限問題って何??

明日18日からG7広島サミットが、いよいよ開催される運びになりそうです。

テーマは多岐に及ぶようですが、既に一部の声明内容が漏れ聞こえる中、
「で、何がどう決まったの?」といった
言わば前近代的な焦点が無い声明に終わって欲しくないと切に願っています。

 
ところでサミット開催に先立ち先日、
バイデン米大統領がG7に出席できないかもしれない
との報道が流れました。

直近の報道では「予定通り出席する」との意思が示されていますが、
その原因は既にご存知の通り、アメリカ政府の債務上限問題が関係しています。

※日テレNEWS5月15日配信動画をキャプチャー 注意:上の画像をクリックしても動画再生にはなりません

実はこの騒動、一般投資家を含めて
長年にわたって金融市場と関わってきた人々の間では
学校の運動会のような年中行事化している案件なのですが、

私もそうだったように、この問題が浮上した今回の当初においては
「いつものやつね。」
といった楽観的なセンチメントが大多数だったと思われ、
現に記事やニュースでも、どちらかと言えば楽観論が多かった気がします。

ところが、イエレン米財務長官がGW連休中に
このまま上限引き上げで議会合意が出来なければ、6月初頭には財源が尽き、
政府が発行した国債の利息が支払えないというデフォルトの懸念が高まる
との声明を発したことがきっかけで

「ん?本当に楽観していていいの?」といったムードが台頭し始めたという訳です。

ということで、
余り深入りする内容については不勉強ながら、
複数のニュースやコラムを読み漁った上で、
特にこの問題が初見だという方々に対して
分りやすい解説になれば幸いと思い、まとめてみました。

 
実はこの問題は媒体によって、米国債券のデフォルトつまり
債務不履行と同じトーンで解説されていますが、
真実はかなり別物だということです。

既に難解な単語が続出していますが、
簡単に言うと、債務上限とは政府の支払い予算と思えばよく、
学生さんが親御さんからもらう月々のお小遣いを、
例えば半年分まとめてもらっているようなものです。

お小遣いの上限が法律で決まっているので、
それ以上の額に対する袖を振るためには
親御さんに頼み込み、同意を得ないといけない
というのが債務上限問題です。

例えば、月々3万円のお小遣い半年分の18万円を年初にもらい受け、
ここまでリボ払いで6万円、昼食代で6万円使ってしまい、
交遊費の6万円が月末を待たずして無くなることが判明して、
さてどうしようか?
という状態が現状…といったところです。

お父さん(民主党)は、お子さん(大統領)に甘く、何でもOKなのですが、
お母さん(共和党)は、お子さんに対して厳しく、
お母さんを説得できない限り、
実際のお財布を握っているお母さんから前借りもできない状態です。
(この父母に関する例えに何の意味は持たず、その逆のお母さんが民主党などでも全く同じ意味です)

もし前借りが出来ない場合でも、
暫くは昼食を抜き、友達とも遊びに行かないで過ごすことはできますが、
もしリボ払いまでに前借りすら出来ないと、
お子さん本人はブラックリストに入ってしまう…
これがデフォルトつまり債務不履行です。

さすがに厳しいお母さんもそこまでは望んでおらず、
逆に闇金融などで借金をされては元も子もないということで、
とりあえずは後半の半年分を先に渡して、
「その調整は昼食代や交遊費から捻出しなさい」
となるシナリオが、要は楽観的だということです。

実際アメリカも、
この上限が法律化された1917年以降の100余年の歴史の中で、
まだ一度もデフォルトに陥ったことはないそうで、

幾ら野党でも国家のクレジットリスクまでは負わない、
というのが一般的です。
もしそうなったら、
野党自身が立ち直れないバッシングに合うだろうからですね。

ですから過去にも、「飯抜き、遊び抜き」の状態である、
政府公共機関の窓口封鎖や公共サービスの停止程度は稀に起きており、

オバマ政権下での場合は確か、
毎週末に発表されるCFTCのシカゴIMMポジションデータが
2週間ほど発表されなかったという記憶もあります。

 
こうした楽観論が多くを占める中、
以前とは状況が異なるリスクがある旨の記事が、
確かロイターさんに掲載されていました。

過去数回にわたって私の当「社員通信」でも
金融不安はいつでも再燃し得る旨を提議したことがありましたが、

この記事でも、一か月ほど前にアメリカで発生した
地銀の破綻がきっかけとなった金融不安の矢先にある
今年の債務問題は、以前に比べると非常に危うい状態にあり、

投資家などによるパニック的な行動が、
デフォルトではない別の原因による
金融不安や相場の過度な乱高下が懸念される、という内容でした。

私としては、実はこの後者の懸念には同感であり、
例えばAIによる斟酌(しんしゃく)ない判断が
引き金を引いてしまう可能性を危惧しています。

もちろん、皆さんに向けては
「あくまで冷静に…」と呼びかけたいところですが、

もし相場がそのように動いてしまえば
対応せざるを得ないのも実情で、
特にこのところの
「仁義なきヘッジファンドの仕掛け」には注意する必要があります。

事実、金融市場では既に
アメリカの短期国債(証券)のデフォルトスワップのスプレッドが
広がっているとの報道や

不動産ファンドから資金が流出しているとの指摘などが聞こえ始め、
FRBも警戒しているとの報道も目に入ってきています。

ある意味で非現実的なこのテーマに対して、
既にこのような兆候があるのだとすれば、もしかすると、
不安を煽るためだけのヘッジファンドによる地味な仕込み
もう始まっていると見えなくもありません。

 
 
浅野敏郎
P.S.
せっかく、リセッションが限定的に終わりそうなムードも出始めている中、米国がまさかの選択をするとは思えませんが、
事態に何の進展もなく、例えば今月末に近くなった際の想定外の米金利上昇は仁義なき仕掛けだと疑うべきに思います。

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