社員通信

世界の10大リスク2025

世界的な選挙年だった2024年が終わり2025年を迎えたわけですが、かねてから想定されていたように、アメリカの新大統領にトランプ氏が座ることになる本年は、世界が大変動に巻き込まれるかもしれないという懸念があります。

そして今月20日(日本時間21日早朝)、新大統領の就任式があり名実ともにトランプ政権が誕生した訳ですが早速、次々に様々な決定や指針が示されたことで、関連したニュースが数多く目に入ってくる状況になり、21日の各金融市場はこうした発表を受けて早々と乱高下する有様でした。

※1月21日16:40前後のロイター社WEBニューストップページ(https://jp.reuters.com/)をキャプチャー
見えているニュースタイトル10項目中、7項目がトランプ関係だった

何をしだすのか読めないトランプ氏の「不確実性」は金融市場の脅威になり得るのですが、とあるロイター社の記事によれば、おひざ元であるアメリカの機関投資家ですら米ドルの今後に関して、見方が二分されるほど混迷しているらしい事を考慮すれば、

我々一般投資家が今後の相場観を持つこと自体、まさに「丁半賭博」に掛けるようなものですから、ありきたりではありますが、暫く事態を見守るのが賢明ではあります。

ただ、トランプ大統領が「どう動くのか」は読めないにしても、「何」に対して動きを見せるのかをザックリでも把握しておくことは傍観者にならないための準備として重要なことです。

 
 
そこで、今回のタイトルにもなっている「世界の10大リスク」レポートですが、ユーラシアグループというアメリカの民間調査機関が年初に発表するもので、後付けされていないことを証明するためと、一種の備忘録を兼ねるという観点から一般に無料公開されています。

当機関の代表者の一人であるイアン・ブレマー氏は「ダボス会議」の講演会に招待されたこともあるほど著名な人物で、多数の著作物や日本のメディアにも取り上げられる、地政学の専門家でもあります。

ここ数年、このレポートが発表されるたびに当「社員通信」でご紹介して参りましたが、2025年のレポートは特に今「何」が問題なのかを知ることができますので、本年もご紹介いたします。

 
前置が長くなりましたが本題に移りますと…
2025年の10大リスクとして当レポートは、

1.深まるGゼロ世界の混迷
2.トランプの支配
3.米中決裂
4.トランプノミクス
5.ならず者国家のままのロシア
6.追い詰められたイラン
7.世界経済への負の押し付け
8.制御不能なAI
9.統治なき領域の拡大
10.米国とメキシコの対立

を挙げており、案外と重要な「リスクもどき」として

・トランプの失敗
・ヨーロッパの分裂
・エネルギー移行の世界的停滞

の3点が挙げられていますが、

筆頭に挙がったGゼロ世界が他のリスクの主な背景になっていると説明があるように、要するに多くの重大なリスクは互いに複雑に絡み合っているということになり、同じ単語が複数のリスクにまたがって登場する分だけ、やや焦点がはっきりしない印象がありました。

何れにしても、皆さんが思っている世界的リスクは概ね網羅されていると思うのですが、言い換えればネット社会のお陰でテーマ程度なら把握できる時代だという事でもあり、その詳細をこのレポートで把握するのには良い機会だと思います。

特に投資や投機を行う上で直接的なテーマは4のトランプノミクスですが、「リスクもどき」の3点も比較的焦点が絞れている分、具体的だと思います。

 
もし「世界」というテーマの敷居が高すぎると思える向きには、「トップリスク2025 日本への影響」を先に読み、出てくるリスクを世界リスクで逆引きするという方法もありそうです。

こちらのレポートもユーラシアグループが作成しており、より具体的に知ることが可能かと思います。

実際に「日本への影響」を読んでみた私の印象ですが、周知の事実が多くの割合を占めていました。

これら周知の事実の、これまた多くの割合を占めるリスクは、トランプ氏が大統領になろうがなるまいが、長年に渡る問題の先送りの結果だと思われ、ただトランプ2.0に突入したことで改めてそのリスクの大きさを認識することになるのでしょう。

日本の現石破政権の少数与党の誕生は我々の責任でもあるとするなら、石破氏に頑張ってもらうしかありませんが、少なくとも以前のような単独与党政権での対米政策は、依然として言いなりになって諸問題を先送りするしかなかったでしょうから、そうならないよう少しでも改善されるべく前に進むためにも、野党の責任もまた重いと考えます。

確かに、外交や国際問題から国内問題まで複雑化した課題を一人で仕切るにはもはや限界があるとも思いますが、
「ディール」こそが外交だと捉えているトランプ政権に対しては、日本の立場からの明確な「ディール」がまた、必要になるのかもしれず、それが可能な党派を超えた人事をするなどの大改革も至急な課題ですね。

 
お仕舞いに、
今回ご紹介した2つのレポート日本語版にアクセスできるURLを書いておきます。
・「世界の10大リスク 2025」…https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Media/files/TopRisks2025JPN(1).pdf
・「トップリスク2025 日本への影響」…https://www.eurasiagroup.net/siteFiles/Media/files/TOPRISKS2025_Implications_for_Japan_JPN.pdf
URLは直接リンクしていません、文字列をコピーして検索エンジンなどに貼り付けてアクセスしてください。

 
 
浅野 敏郎

関連記事