年初、ドル円相場から多少距離を置き、ユーロドルに注目する旨をお伝えし、幾度か現状分析を試みました。
主な動機としては、ロシアによるウクライナ侵略の長期化によって欧州の疲弊がより強まり、
またトランプ大統領による中国締め出しが強化されれば、多くのEU加盟国が参加している中国の一帯一路構想が邪魔になりEU全体が影響を受けかねない、
等の想定から、ユーロ安を方向性として再度、パリティ(1ユーロ=1米ドル)以下を試す可能性に沿ってみた訳でした。
しかしトランプ政権が本格始動した2025年当初から相場は反転し、2月19日に公開したブログで想定した最も遠いレジスタンス1.1275水準を既に上抜けた以上、再び大きなレンジでの揉み合いに突入したと考えられるため、このタイミングで改めてドル円相場の現状を調べてみましたので、簡単に説明いたします。
それにしても、トランプ氏による不確実性の影響は、各相場に対して大きなボラティリティを伴った乱高下となって表れています。
※テレ朝newsのWebに掲載された4月10日記事ページをキャプチャー
実際には無いと思いたいところですが、余りに行き当たりばったりに見える発言と相場変動を合わせみると、「発言を仕込みネタとして裏ではトレード収益を狙っているのではないか?」と勘繰りたくもなり実際、米株市場では既にかなり際どい発言で、相場操縦の疑いが持たれているなど、困った人ですね。
さて、先ずは自分のルーティンに沿って月足からです。
※Trading View社のチャートをベースに作成しました
このチャートは2023年初の安値以降を表示していますが月足分析は実際、いつも見ている訳ではなく、たまに均衡表(厳密な均衡表とは転換線と基準線の2線のみを指します)と価格の位置関係や各線の将来的な変動開始タイミングなどをみている程度です。
先ず位置関係では、依然として好転状態を維持している均衡表ですが、価格は既に145.79円に位置する基準線(赤いライン)を割り込み、今月末が終わった時点で基準線の上に戻していなければ、日銀の第三次円買い介入に端を発した円高波動の終点にあたる2024年9月終値を除くと、2021年2月以来になる、基準線以下での終値を迎えることになります。
また各線に目を移すと、水色の転換線は…
期間の高値足が抜けたことによる受動的な下落となりましたが、24年9月安値から25年1月高値による円安波動の間で推移する限り今後、現在位置の149.22円でこのまま横ばいになり、戻り高値の目安となります。
現在は、いわゆる三尊(ヘッドアンドショルダー)を造りつつある大きな高値揉み合いの中で推移していますが、その中の23年12月足安値140.24円と24年9月足安値139.57円は、三尊のネックラインであると同時に、この高値揉み合いの中で非常に強いキーレベルサポートですから、もしこの水準を下抜けると三尊確定となり同時に、ブレークダウンを引き起こす可能性が高まります。
と同時に、転換線は期間安値を伸ばす能動下落を可能としますので、受動的に上昇している基準線に接近する流れが強まり、その先には逆転する可能性を秘めているという訳です。
この位置での均衡表逆転が即ち下落波動入りを示唆するとは限らない位置関係ですが、少なくとも再度、好転するための条件を満たさない限りは、長期トレンドの再開もないことが言えるでしょう。
三尊が確定した場合、波動的には23年1月足安値127.21円が次のターゲットになり易い恰好ですが、もちろん、そのターゲットの手前には、先行スパンの上限や137円前後で重なる強いキーレベルサポートもありますから、余程のイベントが無い限りは一気に下げる公算は低いと思われます。
次に週足です。
※Trading View社のチャートをベースに作成しました
月足でターゲットとした安値以降を表示しています。
本年に入ってから薄くなり始めた週足先行スパンを25年2月17日週に割り込んで終わって以降、2週ほど先行スパンの中で終わったものの、この薄い先行スパンの上では終値を迎えられず、3週前には三役の内の2役が同時に逆転して3役逆転が完成しています。
しかも駄目押しとなるのは、遅行スパンが先行スパンを下抜く形も間髪入れずに完了しており、かろうじて先行スパンの中にいる基準線(赤いライン)が下抜ければ、いわゆる一目均衡表のパーフェクトオーダーが確定します。
現在の基準線は、安値を切り下げれば能動的に下落できる状態に加え、既に先行スパンB(長期波動による方の先行スパン)の僅かでも下に位置していることから、例え安値を切り下げずに横這うだけで、5月最終週には先行スパンの下抜けを完了しますので、パーフェクトオーダー完成は「もはや時間の問題」という状況です。
最後に日足を確認したいところですが、情報量が多くなりすぎるとも思いましたので次の機会に託すとして、ここまでのまとめを致します。
月足と週足を見た限り、大きな方向性を示す先行スパンとの位置関係は相容れない状態でしたから、再び円安へと回帰する可能性は残ります。
キーレベルを見ても、
※Trading View社のチャートをベースに作成しました
ここから下値側は込み合っており、ザックリと言ってしまえば1985年のプラザ合意以降のドル円相場の殆どは、140円以下での推移だったことを物語っています。
言い換えれば現在価格より少し下の、140円以下には多数のキーレベルサポートがあるため、テクニカル的には急激な下落は望みにくい反面で、日米のファンダメンタルズは円高方向でまとまりつつあることから、底値確認ができるまでは下値を探るセンシティブな値動き、例えば…
週足では値幅がある陰線で終わっても、日足では深めの押しや戻しが幾度かある、といったような値動きが想定でき、早めの利益確定と戻りを売れるようなポジション操作がカギとなりそうな予感がします。
お仕舞いに、週足と月足に限ったキーレベルをまとめますので、ご参考ください。
※S1は142.10に修正いたします(4月17日記)
※想定できるキーレベルを全て網羅したものではありません。画像を拡大したい場合、画像上の任意の場所で右クリックし、「新しいタブで画像を開く」を選択します。ファイナンシャルインテリジェンス社の許可なく当画像の転用や記載データの転載を禁じます。
浅野敏郎
P.S.
使い方として、ショートはキーレベルサポート近辺で一部を利確または両建てし、日足などによる戻り相場で再び売り戻すまたは両建てを解除する…などが一つのやり方です。もちろん、そのままキーレベルを通過する場合は、利確分を売り増したり、両建てを解除するなどの操作が良さそうです。
恐らくこうした場面ではデリケートな値動きをしそうですから、出来れば相場に対峙して直ぐにアクションが取れる状態で臨みたいところです。