社員通信

2025年大詰めに向けてドル円の現状把握

11月も中旬に差し掛かり、今月2回目の投稿です。

次回にお目にかかる際は既に師走…と考えると、そろそろ年末の準備を始めるタイミングになりますかね。

年間の振り返りは次回以降に委ねる予定ですが、最後に相場の現状把握をしてから既に四半期が経過しておりましたので、今回は久しぶりに踏み込んで分析してみます。

ただその前に、

前回の現状把握から今に至る数か月だけをとってみても、重要に思えたニュースが数多く飛び込んできましたが、その割にはインパクトが続かない印象があり、ここにきてやっと調整と言える値動きを見せた日経平均など一部の市場を除けば、明らかなトレンドを認識しにくい地合いだったように思います。

持続性が低いのは、新たなトピックによって上書きされてしまうからかも知れず、言い換えればそれほど重要なニュースが多かったと言えそうな半面で、本来はある程度持続すべき内容が、一過性のニュースによって打ち消されたり、そもそもニュースの重要性に差が無くなってきている感覚があり、

アメリカの政府機能がマヒしていたおかげで、民間データが注目されていたことなどもその一因だと言えるでしょう。

※ブルンバーグWEB版が米・政府機関の閉鎖を伝えるニュースページ(https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-10-02/T3H4GMGOYMTW00)に掲載のイメージをキャプチャー、当該記事とニュースページの内容とは無関係です

今後はニュースや発表などの内容を見極める力が一層求められるのでしょうが、一方でAIトレードが相場変動の原動力になりつつあるとした場合、実際のところ「重要性」は数値化しにくいことから、情報の質に差が無くなるのは当然の流れなのかも知れません。

更には、フェイクニュースや噂なども今後はもっと増えるだろうと思うと、ノイズとも言うべき意味不明な乱高下が頻発し、相場が複雑になる可能性は否めませんが、個人的にはこうした相場環境の変化に対処するために、相場は本質に帰るという信念の元、根底にある本流を如何にして見出すかに磨きをかけたいと思います。

アメリカ政府機関の一部閉鎖がやっと解け、失いかけていた秩序がある程度は戻ることを期待しつつ、少なくとも年内は混乱が続くリスクを覚悟しているところです。

 
さて、漠然とした前置きが長くなりましたが、先ずはドル円相場の月足からザックリした概要を見て参りましょう。


※Trading View社の月足チャートをベースに作成しました
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前回の現状把握は8月20日でしたので、タイミング的に月足に直すと、現状足を含めて4本前の陰線に含まれますが、8月9月を押し目波動として現在は再び、上昇波動に回帰している状況です。

とはいえ、直近の大きな波動は2025年初来高値から年初来安値の波動ですから、大まかにはその中に孕んだ形で推移している以上は「揉み合い」中と言えます。

前回の把握(確認は←こちらをクリック)ではザックリと
・遅行スパンが当時の実際値に触り下側に出る可能性
・均衡表が逆転した際の値動きの反応
の2点を懸念した訳ですが、

遅行スパンは実際値との交差を嫌がるように上昇して回避、均衡表の逆転は決定初月の8月当初のみ下落で反応はしたものの、以降は否定するように上昇したことで、下方リスクはある程度遠のいた形です。

今後、基準線の対象安値は2024年9月安値で暫く動かないため、その間に1番天井を更新する上昇が無い限り、現在の150.76水準で水平推移することが決まっており、重要なサポートレベルとして機能する可能性が示唆できます。

一方でこの先の上方にあるキーレベルは、非常に薄い状況です。

つまり、2024年の戻り最高値を記録する上昇過程でも再三お伝えしましたが、約40年前にさかのぼる超円高時代に1、2度通過したに過ぎない水準でありかつ、プラザ合意によって世界が協調介入して円高に導いたことで、節目をほとんど作っていない直線的な下落だったことが要因になっています。

ですから、2024年以降に付けた目先の1番&2番天井が、ある程度有効なレジスタンスになり得るものの、その先は日本経済崩壊を伴うようなカオスな超円安時代が最悪のシナリオとして残っており、2024年のドル売り介入はその辺りを意識していた可能性も考えられるほどです。

 
では次に、週足把握です。


※Trading View社の週足チャートをベースに作成しました
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こうしてみてみると、2024年を中心とした三尊形成期間を含めて、暫くは大きな揉み合いの中に居ることが改めて認識できます。

本年中盤より暫く先行スパンの下側で推移して売り時代を示唆してた相場は、高市ショックで上に抜けて以降も底堅く推移し、三役好転を維持したまま現状は買い時代にいることが判ります。

均衡表2線は既に能動的な上昇期間に入っており、高値を更新するほどに上昇できる地合いにあり、対象安値も段階的に切り上がることから強い上昇を示唆する状況にあることは事実です。

このチャートを見る限り、上方のキーレベルは2つの天井しか見当たらない一方、下方には均衡表各線や2つの天井を付けた後の下落波動の半値水準である150.76と149.38や、かつてヘビーレジスタンスとして認識していた152円水準など全てが、かつてのレジスタンスから下方のキーレベルに成り替わっているなど、下方リスクに対しては安心感が出ています。

唯一注意する点は、揉み合い期に有効だとされるオシレータのなかから、ここでは9期間のRSIを見る限り、70を境界とした買われ過ぎへ既に到達しており、近い将来にはそれなりの調整が発生する可能性が示唆されています。

 
最後に、日足です。

※Trading View社の日足チャートをベースに作成しました
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前回は7月~8月の揉み合い最中での把握でしたので、細かい数値を引き合いに出しましたが、今となっては高市ショックの急騰によってほぼ全てがその役目を終え、9月に入って新たに出来た17日の安値以外は無効になった状況です。

1番天井よりも先ずは2番天井の本年高値を越えるまでは、足の期間を問わず大きな揉み合いの範疇であることは前述しましたが、本年安値以降の戻し相場を一つの波動とした場合、日足一目均衡表も既にパーフェクトオーダーになっているなど、月足、週足、日足のどれをとっても一目均衡表が直接示唆する上値レジスタンスは皆無です(転換線、基準線、先行スパンは全て価格の下側に位置している、ということ)。

また、2つの天井を結んだトレンドラインは既に上抜いていることも、円安目線の追い風になっているでしょう。

一方、レジスタンス側は、

本年安値以降の上昇波動は、チャート内に青いラインで記した二波動と現在進行中の波動との三波動で簡素化できることから、こちらを元にして上値目標を計算してみますと、

・N計算値とV計算値は僅か16pipsの差しか無いこと
・一応の目先の最大値となるE計算値は奇しくも一番天井と同値であること

から、共にヘビーレジスタンスになる可能性は高いと考えられそうです。

その他、具体的なキーレベルに関してはいつものように、巻末で一覧表にしておきます。

 
さてお仕舞いに、

長期に及んだアメリカの政府一部機関の閉鎖がやっと解け、10月発表予定だった9月分の雇用統計が11月20日の定時に発表されることが決まったようで、確かに内容の信ぴょう性には疑問が残るものの、政府筋からは9月分のデータは収集済みとのコメントも聞かれています。

信ぴょう性についてはさて置き、ひとまずは基軸通貨である米ドルのマザーカントリーたるアメリカの経済指標が戻ってくることで、各国の通貨にとっても一つのメジャーメント(価値を測る物差し)が復活し、妙なローカルネタで相場が動くリスクは低下すると思われ、

この意味で、冒頭に記した漠然とした懸念はそれなりにクリアになることが期待できます。

 
ただ、日本のGDPが6期ぶりにマイナス成長したことで日銀の利上げ期待は後退し、アメリカの12月追加利下げに対しても、据え置きと見方が割れる状況となり、これだけを見ても少なくとも円高の目は少し遠ざかりました。

そんな中で、これ以上の円安は明らかに日本経済や物価高であえぐ日本国民にとっては「毒」であることは間違いない一方、高市政権の積極財政と相まって円の力は益々低下する可能性が高くなったというのがコンセンサスになりつつあります。

実際に現状でも、円安による物価高は不動産をも巻き込み、当時は円高だったことを除けば1990年に至るバブル期と状況はどんどん似てきていると感じます。

今回、現状把握をしてみて、改めて為替は今のところ確かに円売りが順当ではあり、最悪のシナリオに向かっているのは事実ですから、常にリスクオフの事態を想定しつつも、ここはあえて毒を食らいに行く必要性も少しずつ上昇しているのかも知れません。(2025年11月18日15:10記)

 
 
浅野

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