社員通信

シカゴ筋のポジションレビュー

2024年の半分があと10日で経過してしまう中、
各相場は一旦の中休みと言わんばかりにやや方向性を欠く流れになりつつあるような気がします。

思惑が交錯した中央銀行ウイークも先週で一段落して手がかり材料も出尽くした観もあり、
久しぶりにIMMポジションを簡単に眺めてみたいと思います。

※出処:日刊工業新聞のWEB記事(https://www.nikkan.co.jp/articles/view/271004)より CMEのピットの様子

IMMポジションとは、
アメリカの商品先物取引委員会(CFTC)が日本時間の毎週土曜日早朝に公表する建玉明細のうち、
シカゴに本拠地を置くCMEの金融先物取引の建玉明細がいわゆるIMMポジションと言われます。

IMMポジションは通貨だけではないのですが、
為替先物のポジション動向を週一回という細かさで観察できることから昔から為替の世界では有名だったことで、
IMMポジションといえば通貨ポジションの代名詞的な扱いになっているのでは、と思います。

本日時点での最新データは
IMMが先週の火曜日に引けた時点のデータになり、
リアルタイムでの取引が通常の我々トレーダーにとっては有効性に疑問を持ちそうですが、

毎週、アメリカの為替先物を扱う中心的な取引所データが分かること自体は、貴重な機会ではあるので知っていても損はない情報ではあります。
確かに、証拠金取引(いわゆるFX取引)が主要である今日では通貨先物取引の重要性を失いつつありますが、不思議とポジションと相場変動とはある程度の相関性が今でも保たれており、大きな流れを確認する点では意味があると思います。

さておき、
さっそくデータと推移を見ていきますが、FX各社で概ね網羅されているIMMデータの中で、オープンで確認しやすい外為どっとコム社のコンテンツを使わせていただきます。

では日本円のデータで進めて参ります。

※出処:外為どっとコムのIMMポジションコンテンツ(https://www.gaitame.com/markets/imm.html)より
取引会社として推奨する意図はございません。

画像の下辺にグラフの説明がありますが、
・オレンジのラインは円の売りポジション推移で目盛は左のY軸
・水色のラインは円の買いポジション推移で目盛は左のY軸
・赤のラインは対ドル相場の推移で目盛は右のY軸
・ブルーのヒストグラム(棒グラフ状)がネットポジションの推移でセロラインの下側が円売りで上側が円買い
といった感じです。

 
見方のコツとでも言いますか、注目点を自分の視点を含めて申し上げますと
①ネットポジションの多さ
②ポジション全体の多さ
③相場変動に影響するポジションサイドと直近の傾向

あたりです。

目盛なども細かく確認できないことからも、ざっと流れを掴んだり、警戒感を感じ取る程度だと捉えています。

一つだけ覚えておきたいのが、ポジションの対象は何かということですが、あくまで円ですから円の売り持ち(ショート)は、ドル円でいうとドルの買い持ち(ロング)に相当する点、赤のラインと見比べる際に注意が必要です。

①ネットポジションの多さ…について、
ネットポジションとは文字通り、円売りポジションと円買いポジションの差を指し、円売りが上回れば売り越し、円買いが上回れば買い越しと表現します。
見えている限りヒストグラムはゼロより下で推移していることから、円売り残が優勢な状態が暫く継続していることが判りますね。

ひと昔前まではこのネットポジションがキーとなるデータで、10万コントラクト(枚)を上回ると反転に注意が必要…ということでしたが、金融情勢がここまで明確に異なっている現在では再現性に欠ける感じです。

ただ、介入直前でピークを打っているものの高い水準で推移しており、この状態を念頭に入れておく価値はありそうです。

②ポジション全体の多さ…について、
円の売り残と買い残の総和という意味ですが、そもそもポジション量が低いのはその通貨に興味がなく、多いのは興味が高いことになり、ヒートマップとしても活用できるかと思います。或いは高い状態で相場が持ち合っている場合は、何かのきっかけで大きく変動する可能性があり、曖昧ないわゆる相場エネルギーの充填具合を可視化できるという訳です。
例えばネットが5万枚だったとき、1万と6万のネットである場合と、15万と20万のネットでは円に溜まっているエネルギーが違います。後者は多少の増減では動きにくいかも知れませんが一たび動きはめればトレンドになる可能性が高いという訳です。

③相場変動に影響するポジションサイドと直近の傾向
ドル円相場の変動に影響を与えたポジションはロング側なのかショート側なのかをイメージしておく、ということです。
例えば円安という相場の要因は、円売りポジションの増大、円買いポジションの投げ、円買いから円売りへのシフトが考えられますが、グラフを見る限り円買いポジションは3万~5万枚の間で上下する一方、円売りポジションは出入りが激しいため、ドル円相場の変動は円売りポジション次第だということが改めて確認できます。

サイドがシフトする場合、ロングとショートのラインは同時に下落または上昇するはずですから、その場合の変動は強い可能性があり得ると思います。

以上、こちらのコンテンツでデータ の詳細を確認したい場合は、目的のデータ上をマウスオーバーすると、詳細データがポップアップしますのでご参考ください。

※出処:外為どっとコムのIMMポジションコンテンツ(https://www.gaitame.com/markets/imm.html)より、マウスオーバーした様子
取引会社として推奨する意図はございません。

 
お仕舞いにザックリとした個人的なまとめですが、

2024年当初からのドル円の上昇要因は円売りポジションの増大である一方で、円買いも少しずつ増えていたことからレベル感での円買いもそれなりに出ていたようです。

ただ、戻り最高値152円を超えた辺りからは円買いの手仕舞いが見られ、直近介入以降も手仕舞いが続いていたことが判ります。

介入での下値確認以降、円売りポジションは介入前には戻していない中で、相場はじり高となって再び160円台を目指す展開です。円買いの整理も一息ついた中でのドル円上昇には違和感が残ります。

この状態でのトレンドは脆弱であると見ることに加えて、高値警戒からか円売りの手仕舞いも散見されているようにも見えます。

もちろん投機筋のポジションだけで相場は動きませんが、市場規模が縮小しつつある中で、
今後も暫くはロングにもショートにも顕著な動きがでない限り…という条件で
直近の円安相場に追随する意識は薄く、支払いスワップも大きいため円買いポジションも積極的に取れないスタンスに当然ですが変わりはありません。

押し目での円売りを模索する展開しか残っていないのが現状であるため、今後も暫くは押し目の水準を探していくことになりますが、もし取り組むのであれば、ある程度の押し目から若干戻した局面で円売りを試し、押し目を割り込んだところでロスカットといった、細かいトレードに徹するのが良さそうだ、と考えているところです。

 
 
浅野 敏郎

P.S.
レビューというより解説になってしまいました(汗)

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