関東地方も桜の開花宣言がありましたね。
今週末辺りが見ごろということですが、実家の庭の桜も五分咲き程度で、週末が楽しみです。
※写真は早咲きの桜が満開だった様子 中央にメジロがいるのですがわかりますかね?
今年の開花宣言は例年よりかなり遅かったようですが、暖冬イコール早咲き ではない事を知り驚きました。
温暖化が招いたとされる多くの異常な事象も、もしかすると誤解であふれているかも知れず、騒ぐ前には一通り、調べてみたいと思う次第です。
さて、スイスショックとは何だったかを語るには、時を2015年以前へと遡る必要がありますが
当時のスイス政府はスイスフラン高を抑制するために、対ユーロ相場の上限を1.20とする政策を数年来継続しており、
スイスフラン高に対して実際、この水準で無制限介入を行っていた経緯がありました。
介入理由はそれこそネットで検索いただければ数多くの記事であふれていますが、
要は2015年のある日、
これ以上の介入はできないと判断したスイス政府は突然その政策を断念し、
1ユーロ=1.20の無制限介入を中止した訳ですが、
その途端、
ユーロスイス相場は1ユーロ=1.20から瞬く間に1ユーロ=0.86前後へとスイス高が進んだ
という訳です。
当時の週足チャートを示しますと
※Trading View社のチャートです
ざっとこんな感じになるのですがこの一件で
大手の機関投資家やFX会社が多大な損失を被り、米系の大手FX会社が破綻することにもなりましたから、
10年程度の投資経験がある方なら記憶に新しいところだと思います。
ただ一般的な投資家にとって不幸中の幸いだったと言えるのは、
当時のユーロ圏の時代背景として、ギリシャを筆頭としたいわゆるPIGSの債務危機が取り沙汰されていた時代だったため、
(PIGSとは Portugal,Italy, Greek, Spainの頭文字)
基本的にはユーロをロング(買い持ち)にする選択肢は非常識だったことです。
つまり、
この相場急落で損失になるとすれば概ね、介入期待による対スイスでのユーロのロングが損切りできなかった可能性しかなく、
あのような時代背景の中で対スイスフランでユーロをロング(買い持ち)にしていたのは、野心的な一部のヘッジファンドや投資家に限られていたことで、
多くの一般的な個人投資家が多大な被害を被らずに済んだ、という訳です。
何れにしても、
世界中の投機、つまりは市場のコンセンサスに対して
一国の政府介入が初めから完全に勝てた歴史は知っている限りは皆無で
イギリス政府を打ち負かしたことでも有名なソロス氏の一件も結局は
通貨防衛に限界を感じた当時のEUがポンドの買い支えを断念した結果とも言え、
つまりは一国の都合による介入は市場に歪を生み、その歪を突かれたという事でしょう。
さてさて本邦に視点を移すと、
今国会でも急激な円安に対して答弁があったように、
財務大臣や首相を含む日本政府の見解は
あらゆる手法を通じて断固たる処置を行う準備があると一辺倒な答弁を繰り返しています。
急激な変動とは何を指すか?
という、これまでより突っ込んだ質問もありましたが、
ある期間に対する過度な変動(合ってますかね?)というに留まり、
「政府の立場から言及は控える」といった教科書的な見解で質疑は終わっていました。
確かに、こればかりは政府として限定できないのはある意味当然である一方で、
これ以上の円安は政府が目指す実質所得の向上に向けては不利であることから容認できない、
という強い覚悟は見て取れた印象です。
そこで私たち一般投資家にとって、
どうなると介入するのかというのが重要なテーマになるのは必然だと思いますが、
介入水準に対しては既に様々な憶測が飛び交い、
直近の2度のアクションがボリンジャーバンドのσ2に達したタイミングだった
といった内容を記事で見た記憶などもあります。(何足でパラメーターは何?といった疑問は残りますが…)
実際、直近の2度目の介入によって完膚なきまで売り下げた際の起点高値が、既に多くの方面で認識されつつある152円手前であったことや、
この水準が近づくとけん制発言が多発してきた経緯を考えると、
もしかすると政府はこの152円を、
かつてのスイス政府による対ユーロ介入と同じような限界水準に設定している可能性を感じずにはいられません。
その根拠に関しては別の機会に委ねたいと思いますが、それよりも何よりも、
もし市場がこの152円を円安限界の想定ボトム(ドル円相場としては天井)だと明確に認識した場合、
かつてのユーロスイスショックを再現してしまうリスクを考えておかなければいけないかも知れません。
つまり、151円台後半になると介入を期待するドル売り円買いが持ち込まれ
僅かな円高局面で利益を生むようなトレードが今後も繰り返された場合、
最終的に152円が突破された時には異常なストップロス相場にもなりかねない、ということです。
もちろん、
円とスイスフランの流動性を考えると、その動きはあそこまで酷くないかも知れませんが、
少なくとも通常の乱高下で想定できるような数十ポイント以内の損切すら難しい可能性がありそうです。
最後になりますが、
今回のドル円相場の上昇要因は既にご存知の通り、
・ドルと円の金利差
・日本の貿易赤字
・海外投資を含めた実需のドル買い
など、投機だけではない実情が深く関わっています。
こうした要因に何の変化もないまま、もし介入を前提としたポジションが積み上がっていくとするなら
繰り返すようですが、決壊した際はスイスショックと同様の危うさを伴っていると考えておくべきです。
個人的には恐らく、
152円台に乗せるような段になった際はやはり、介入をする可能性は高いと思ってはいますが、
警戒感だけで相場の高止まりが長く続くような場合でも、
・少なくとも実需は高値もみ合いでも買い切れない場合、嫌でもここから先を買わなければいけない
・政府の意に即した介入期待の為替投機はキャリーコストが高く、そもそも次のアクションは買戻しである
ことなどを考えると、
遅かれ早かれ誰かが152円を試し、政府の行動を確認する場面がありそうだと考えています。
そして、
結果的に実際の介入で再度下げたとしても、152円が限界水準であることが世界中に確認されてしまうことになりますから、
ファンダメンタルズに何も変化が無い限り、その次こそスイスショックの二の舞になる確率が高まると懸念しています。
浅野敏郎