社員通信

インバウンド需要が期待される中で

普通の市街地でも
本当に外国人の方々が多く見受けられるようになり、
コロナ期間の衰退が着実に回復していると実感します。

そんな中で、
皆さんはお盆休暇をどうお過ごしでしたでしょうか。

今年のお盆期間はあいにく、台風7号の直撃を受け
新幹線の中枢路線が長時間運休するなど、
影響を受けた皆さんもおいでかも知れません。

また、影響に巻き込まれた特に外国人旅行者を
ニュースの中継などで目にするにつけ
気の毒としか言いようがありませんでした。

※日テレNEWSのYouTubeよりキャプチャー 被写体と本文は無関係です

偶然の自然現象とはいえ、苦労の記憶が強い場合は
日本に対する印象もネガティブになりかねず、
非常に残念です。

 
ところで、
コロナの扱いが5類に移行後、
再びインバウンド需要という言葉を
頻繁に見聞きするようになりました。

インバウンドという意味を改めて確認してみると、
旅行業界的には「訪日外国人観光客」を指しており、

インバウンド需要とはこうした海外からの旅行者が
日本滞在中に起こす消費需要ということになります。

確かにインバウンドの別の意味として
外から中に入る、内向きの といった意味もあり、

日本政府や自治体による旅行支援が最盛期だった
GWあたりでは、
東京からの旅行客を取り込む周辺観光地のテーマとして
インバウンド需要なる言葉がよく使われていた気もしますが、

県外からの観光(客)を指すのはやや変化球な気もしますね。

 
 
さて、
インバウンド需要が注目される理由は
いくつかあると思いますが、

最もシンプルな理由として、繰り返しになりますが、
こうした海外旅行者が日本で落とした消費の
経済効果が期待されるということですから、

なかなか消費が盛り上がらない日本経済にとって
確かにこの経済効果に期待するのは一理あるでしょう。

ただ問題なのは、
こうした経済効果が日本国内に留まり
結果的に好循環が生まれれば良いのですが、

構造はそれほど単純ではないかも知れません。

 
ところで、
少し前に中国が始めた日本に対する各種規制が
話題になりましたが、

そんな中で最近、
中国は日本に対する団体旅行の規制を撤廃する
とのニュースが入りました。

このニュースがキッカケとなって、
インバウンド需要への期待が
日本国内で一段階加速した訳ですが、

この発表が意外だったのは私だけではないと思います。

 
「爆買い」で有名になった
中国からの第一次インバウンド景気は
日本製の電気製品がメインだったと記憶していますが、

日本製電化製品は壊れにくいということで
中国人の中で非常に人気となった背景がありましたね。

秋葉原にはこうした買い物客が殺到し、
買い物専用ツアーまでが出現していたと思いますが、

当初は、
とある中国資本の電気屋さんへとツアー客を流すことで
結局は中国人がこの店舗で落とした金銭は
この電気屋さんの儲けとなり、
その経済効果の多くは中国資本を通じて本国へ還流していた…
というのは有名な話です。

もちろん、中国資本とは関係ない周辺店舗への波及効果もあり、
こうした消費による収益の全てが全て、
中国本国へ向かった訳ではないでしょうが、

今となっては宿泊施設を筆頭に、
その他の業界にも中国資本が幅広く行き渡っている可能性が高く、

本邦のインバウンド需要が高まれば高まるほど中国が儲かり、
その他の国々からのインバウンド需要すら
持っていかれる構造が既に完成している可能性を、
今更否定できないでしょう。

確かに、中国資本(中華マネー)のおかげで生き残った
地方ホテルや旅館も多いとされており、
ネガティブな側面だけではありませんが、

こうした緻密な収益構造を国家全体で推し進める中国の手法は
お見事であり、日本も是非見習うべきでしょう。

 
このように物事を裏から覗いてみると、

中国が決断した団体旅行解禁はもちろん、
中国内の日本旅行需要の高まりに対して配慮した側面も
充分にあるとは思いますが、

輸入規制をすることで、在中国の日本資本を苦しめ
収益が上がらない体制をとる一方で
旅行を解禁することで、在中日本資本に落ちていた消費を
日本にある中国資本で消費させることで、

中国民の旅行規制に対する不満は解消され、
更にはその幾割かはきちんと本国へ還流できることになり、

長引く日本の不況の間に
着々と手を広げていった中国の日本投資が
いよいよ回収するフェーズに踏み切ったとも見えます。

 
それに比べて、
インバウンド需要による利益が
しっかりと国益につながるような構造の議論無しに、

このブームに踊っている日本政府関係者が、
個人的には何となく間抜けに見えてしまうのですが、

失われた30年を埋めるために必要なのはもしかすると、
IT化や効率化など当然な対策と並行して、

日本国内の細かい構造改革を
ボランティアや経営者判断に押し付けるのではなく

国が具体的にけん引するくらいの方が、
息が長い経済の好循環につながるような気がします。

確かに時間と手間はかかるでしょうが、
30年間放置してきた代償は大きく、
小手先の対応だけで自己満足していればやがて

外資に吸い取られるだけ吸い取られた挙句に、
資本が引き上げた後には、更に衰退した無残な姿しか
残らないような事態が想定され、

もしかするとこうした構造は既に
出来上がっているのかも知れません。

そう言えば昔、hanako現象というのが問題になり
それと似たような事ではありますが、

まあ、詳細を分かっていない外野がブツブツ言うほど、
簡単な事ではないとは思っています。

 
 
さてさてお仕舞いに、為替相場について一言だけ。

前回の投稿から、想定通りドル高が進み、
対円相場はやや早すぎる上昇となっています。

中央銀行である日銀は少し前に、
長期ゾーンのイールドに対して上振れを容認するなど、
円高誘導ともいえるYCCに踏み切りましたが、

その効果は一時的で、
逆にドル金利に対する上昇余地を与えてしまい、
ドル高が強まっている形です。

相場管理も含めて為替の管理は、日銀ではなく、
政府財務省が担っていることは周知の事実ですが

インバウンドの高揚は円安も片棒を担いでおり、
円買い介入はこの流れに反する決断になります。

ということは、急激な円安ドル高ではない限り、
政府の方向性に同調する、つまり、
暫くは円安を容認する可能性が出てきたように思います。

問題は急激な変動とはどの程度を指すか?
ということになりますが、

こればかりはさすがにアイデアはありません。

ただタイミング的には、
世界的なサマーバケーション期間が終わる9月以降は
インバウンド需要も一服する可能性が在り、
水準によっては、
政府が不快感を表してくる可能性はあり得るでしょう。

まあ、こうした雲をつかむような話はさておき、
これだけは言えることとして、

特に為替(FX)を取引する場合、
円安だろうと円高だろうと、
動きがあれば収益チャンスになります。

確かに円安は今のところ、
日常生活にとって諸悪の根源になっていますが、

円高なら全てが上手くいくかと言えば、

失われた30年の半分以上が物語っているように、
それはそれで不都合は沢山あるということが判っています。

つまり、
不利益を嘆くだけか、その動きを利用して利益を伺うか?
これは自分の判断でどうにでもなることだけは事実であり、

後者を選択して初めて、
利益を得やすくするためには何が必要か、何がNGかを知るために
投資の学びがあるのだと思います。

 
 
浅野敏郎

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